やちむん 拓美窯

~沖縄県読谷村~

拓美窯 窯主の比嘉 拓美さん

拓美窯さんは、比嘉 拓美(ひが たくみ)さんがお一人で作陶されている小さな窯元さんです。拓美さんは、沖縄を代表する陶工である故人・上江洲 茂生(うえず しげお)さんに師事し、茂生窯での11年の修行の後、2000年に独立されました。

拓美さんと陶芸との出会いは、20歳の時。実家は沖縄市でお蕎麦屋さんを営んでおり、お店の器は、お父さまの好みで茂生窯さんのものだったそう。ある時、茂生窯さんで「アルバイト」を募集しているのを知り、軽い気持ちからアルバイトとして茂生窯さんに通うようになり、いつしか作陶にのめり込んでいったそうです。

元来、一度はまると徹底的にのめり込む性格なようで。独立したての数か月は、工房内のDIYに熱中し、まさに朝から晩まで大工仕事をしていたそう。
「あの時は、大工仕事が楽しくて、楽しくて仕方なかった。もともと何かを作ることが好きみたいで、今振り返っても、本当にワクワクした数か月だった」

そう語る拓美さんの工房は、いつ訪れても、きちんと整理整頓されていて、拓美さんの几帳面な性格がうかがえます。

独立してしばらくは、象嵌(ぞうがん)のうつわ作りに熱中し、小物から大きなものまで、様々なアイテムを制作していたそう。

「師匠からは、良いものを作っているなあと褒められたけど、売れ行きは全然ダメ。唐草など、通常の染付のうつわに比べると、作業時間が3~4倍かかるにも関わらず、当時は全く売れなくて、見向きもされなくて。落ち込んだよね…」

今でも、工房内のあちこちに象嵌のうつわが使われています。
とても素敵なデザインなので、ぜひ再びの制作を熱望していますが…。


象嵌の按瓶(あんびん;土瓶)

その後、いったん象嵌づくりからはきっぱり手を引き、自分らしいうつわ作りに試行錯誤する。

「故・濱田 庄司さん(益子焼・人間国宝)は、修行期間が3年ながら、師匠の芸風から抜けて自分らしさを表現するのに10年かかったと語っているくらいだから。自分はもっと時間がかかるのはあたりまえ。でも、4年前に、この鳥のうつわを作るようになってからは、師匠の芸風からは抜けられのかもしれない。師匠がこの鳥のうつわを見たら、お前は何を作っているんだ、って言いそうだけど(笑)」

鳥のうつわは、平筆を使って何か書けないかなあと思ったのが誕生のきっかけだそうで。理由は、子供の頃に授業で絵を描く時、平筆を使うのが好きで、書きやすかった記憶があったから。

鳥シリーズ誕生期に作られたマグカップ。どこかまだ、鳥の形がカクカクしていて、ぎこちない…

今でも拓美さんが工房で愛用されています。

まずは、拓美さんによる鳥の絵付けの様子を↓こちらにてご覧ください。

例えば、お皿の絵付けをする時、最初の1羽は、ある程度こんな形にしようとイメージして輪郭を描いていくのだそう。でも、2羽目以降は、スペースを見ながら、まさに筆にまかせて構図も形も決めていくのだそうです。

だからこそ、全部の鳥が両翼を大きく羽ばたいている姿にはならず、少し傾いていたり、横からのショットになったり。お皿1枚1枚ごとに、構図も1羽ずつの姿形もバラバラ。でも、だからこそ、そこがとても魅力的で愛おしい。

「例えば、空を3羽の鳥が飛んでいるとして、どこから見るかによって、鳥の翼の伸び方って、異なるでしょ。真上から見たとしても、全羽が完全にシンクロして、両方の翼を伸ばし切って飛んでいることなんて、自然界では滅多にないはずで。少し右肩下がりに傾いて飛ぶ鳥がいたり、頭を下に向けていたり。このお皿の鳥たちも、そんな風に、手に取った方に想像しながら見てもらえると、楽しいんじゃないかなあと思っているんだけどね」

また、鳥シリーズ同様に人気の、唐草の飯椀の絵付け風景も撮影させていただきました。唐草の絵柄は、茂生窯さんでの修行を踏襲する昔なじみのデザインとのことですが。鮮やかでややフェミニンな色味の唐草は、特に女性に人気があります。

こちらの映像はちょっと長いですが(約3分あります…)、拓美さんが絵付けをしながらこだわりのポイントを解説してくれていますので、ノーカット版にて、ぜひお楽しみください。

鳥や唐草以外にも、ドットのうつわや様々なデザインのぐい呑みなど、拓美窯さんのアイテムはいろいろありますので。これからも、適宜、魅力的なアイテムを入荷していきたいと思っております。ご期待ください。

工房内には、思いついた時に釉薬の試し焼ができるように、常にテスト用のぐい飲みを用意。下の写真は、過去に試し焼をしたぐい呑みコレクション。それぞれに、試した釉薬の内容が記載されている。研究熱心で几帳面な拓美さんならでは。

中学の頃より釣りが趣味、という拓美さんが作る陶器のルアー(陶ジグ)。
材料はどれも環境を配慮した自然に優しいもの。サステイナブルなルアーです。

去年からイカ釣りを始めたそうで。それまでは、釣った魚はリリースが基本だったので、イカの命をいただくことに、罪悪感を覚え…。供養のためにと、イカの絵柄のお皿を作ったのだそう。アオリイカ(白イカ)が意外とカワイイ♡

音楽好きの拓美さんの工房には、いつもギターが。手が進まない時は、工房でギターを抱え、フォークソングを歌っているそうです。

ここ数年は、スピーカー(アンプ)作りにのめり込んでいたとのことで、工房には電機屋さんのような配線やらの部品がきれいに収納されています。

工房内の本棚。陶芸関係の書籍の中心には、拓美さんが尊敬する河井 寛次郎さんの作品集も。

海のすぐ近くに立つ拓美窯さんの工房。飾り気のない入口からも人柄がうかがえる

▸拓美窯さんの器をOnline shop で見る。

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